アルバ・デジュネあとがき
彼女は
「人を愛せる人」
たとえそれが返ってこなくても。
そんないじらしい女性だと思いました。
「愛することはいつだって危険をともなう」
なんて
どこかの哲学者が言っていたけど
その危険をおかしてまで、「人を愛する人」として演じました。
彼女はいつだって自分の気持ちに正直な人だから。
それは自分の分身ともいえる子供に対してだって変わらない。
子どもの気持ちより、自分を優先できる生き方。
誰にも邪魔はさせない。
大女優たる所以がここにあると思っています。
なかなか、受け入れがたい感覚かもしれないけど
長年演劇をやってると
あくまでも自分の意思を自分こそが尊重しなければならない
という局面はいくつも訪れるから
私はアルバのこの決断にとても惹かれました。
それが母親としてどうなのか?と言われれば
自分らしく生きることは、一方でどこかで誰かを傷つける生き方でもあると思っていて。
子どもを傷つけてまで自分を通すことに批判もあるし
その結果を引き受けざるを得ない局面が作品の中で描かれていたように思います。
また、彼女には母親のモデルケースが存在していないように感じました。
母親とは・・・という影がない。
それに、若いころから持っている家族というものに対する憧憬をみるに
アルバには、家族がいなかったんじゃないかなと感じました。
だから求めてやまないのが「家族」「劇団」という居場所なのかもしれません。
生まれた時から一人ぽっちだった女性。
この二つの気質の間で引き裂かれた人物が核にあるんだと思いました。
この造形の深さに
ハートに火がついてしまって(笑)。
素晴らしいキャラクターだと思いました。
最後の棺の上で亡くなった夫に話しかけるシーンは象徴的で
もう抱きしめ返してもくれない元夫を抱きしめるシーンだと思っています。
棺を抱いても冷たくて、固かったな(笑)
でも、この元夫は20年、共に暮らしたときも
アルバが彼を抱きしめるのと同じ意味で
抱きしめ返してくれたことがあったのだろうか?
とも思いました。
ずるくて、意地悪な、愛しい人
そんな夫に、20年前にも、そして20年後の今も失恋しちゃうなんて
誰か、アルバを抱きしめてあげてください(笑)!!
それでも最後は前を向いて
愛する人の庭から出ていく
自分がいなくても美しく成立している「家族」から
出ていく。
彼女が本当に望んでいたものは
何一つとしてままならないままに、
その場にすべてを置いて、先へと進む。
そんなメッセージが伝わったらいいな
と思って演じました。
できていたかどうかは
分からないけど・・・。
私はアルバ・デジュネ
大好きです。
この役を頂けたことは
とてつもなく幸運で
光栄なことでした。
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